【多摩湖南岸の廃ラブホ群】東大和/武蔵村山のラブホテル廃墟通りを歩く

東京都

訪れたスポット
1.旅荘みずうみ
2.ホテル アリス
3.ホテル ジュテーム
4.ホテル Jハウス
5.ホテル サンワ
6.ホテル アン
7.ホテル いこい
8.ホテル クイン
9.旅荘赤坂

1970年代ころから、都道253号の東大和市芋窪から東京都武蔵村山市中藤にかけては、妖艶なネオンラサインに照らされた宿泊施設が軒を連ねるラブホテル通りだったらしい。
昭和の連れ込み宿っぽい雰囲気を残した旅荘、当時流行した西洋の古城を模したホテル、コテージに自動車を横付けできるモーテルなど、それぞれの時代に合わせて増改築を繰り返し営業してきた。

都道253号は多摩湖自転車道と呼ばれ、平日でもランナーやサイクリストの姿を見かける。並走する一般道は自動車で通行可能だ。
地図の赤線のコースで片道約2.3キロ。電車でアクセスする場合は、多摩湖の北側にある西武線西武球場前駅を利用するといい。
『旅荘みずうみ』は業態転換し、現在は写真のようなランナーやサイクリストのための休憩所になっている。明るい雰囲気なので比較的利用しやすいかも。デイユース(休憩)のほか、宿泊プランもあり。
『ホテル アリス』の廃墟。敷地内に給水塔が立てられているのが見える。シャワーの水圧が強そう。
本館の2階は窓ガラスが割られている。雨風で室内が激しく劣化しているのが容易に想像できる。
バリケードの隙間から敷地内を覗くと、アスファルトの割れ目から雑草が生えていた。この廃墟は管理者がおり、事前に予約すればロケーション撮影などに使えるそうだ。
ホテル脇の細道に、落書きだらけのトタン板が立っている。このあたりの地域は、とにかく落書きと不法投棄に悩まされている。

2022年現在、明確に営業しているといえるラブホテルは1軒のみ。ほかには、ランナー用の休憩所に業態転換したのが1軒、開店休業状態なのが1軒。残り7軒は、2000年代初頭までに多くが廃業している。

『イメージマジック HOTEL ジュテーム』の看板。付近を散策したが、この名前のホテルは見つからなかった(ホテル Jハウスの旧名という説もある)。
清潔な雰囲気のあるラブホテル。現在確実に営業しているといえるホテルはここしかないようだ。

この通り(都道253号+都道55号)をまっすぐ進むと、武蔵村山市の日産自動車村山工場の跡地につながる。村山工場は同社の屋台骨を支える小型車マーチ、日本テレビ系『あぶない刑事』の「港303」でおなじみのレパード、スカイラインGT-Rなどの名車を生産した日産自動車の主力工場だった。
最盛期は3000人が働いていたが、2001年の工場閉鎖にともない、多くの従業員が栃木や追浜の工場に異動した。周辺の下請け工場や飲食店も潰れ、企業城下町の武蔵村山市は一時的に“過疎”が進んだという。

『ホテル サンワ』は閉業したが、その土地や建物は現在も住居として利用されている。当然立ち入らないようにしたい。
休憩料金は不明。宿泊料金は5000円。コテージの屋根が雨で朽ちているのがわかる。
『ホテル アン』の廃墟。ゲートにはバリケードが張られ、闖入者を固く拒んでいる。5年ほど前まで営業していたようで建物はきれいな状態を保つ。
2階の窓ガラスが一部割られているのが確認できる。侵入者が内側から壊したのか、それとも誰かが石でも投げたのか。
背の高いバリケードの上から撮影してみると、敷地内は特に荒らされた形跡はなく、静かに時間の経過に耐えている。
ホテルがまだ営業していたころは、夜になるとこの塔が妖しく光り、通りを走る車を誘ったのかもしれない。

都道253号のラブホテルが潰れたのは、工場の閉鎖も影響しているのではないか……とこっそり思っている。村山工場から西武園までの緑の道路は、最高のドライブコースだ。わたしが阿木燿子なら、「緑のなかを走り抜けてく真っ赤なポルシェ」と詩を書いたはずだ。
狭山スキー場や西武園でめいっぱい遊び、湖畔のレストランでディナーを楽しみ、その帰りにネオンサインにライトアップされたラブホテルで煙が出るほどパコる。120パーセント最高のデートである。
しかし工場の閉鎖後は利用客がガクッと減り、もともと何もないところに林立していたラブホテルは次々廃業した……のではないかと想像する。

通りから少し入ったところにある『ホテル いこい』。建物は古いが、人目を避けて逢うには最高に燃えるロケーションだろう。
入り口はフェンスで閉められていた。管理者はいるようだが、現在営業しているのかは不明。
昭和の時代の建物らしく、ここにも立派な給水塔があった。
ホテルにつながる道路は、壁一面を隔てて、左が私道、右が市道らしい。市道側には介護療養系の病院がある。

2022年現在、都道253号沿いのホテル/ホテル跡は以下のとおり。東側から、旧旅荘みずうみ(業態を変えて営業中)、ホテル アリス(廃墟)、ホテル ジュテーム(所在確認できず。現ホテル Jハウスという説あり)、ホテル Jハウス(営業中)、ホテル サンワ(廃業)、ホテル アン(廃墟)、ホテル いこい(ゲートが閉まっており、営業しているか不明)、ホテル クイン(廃墟)、旅荘赤坂(解体済み)。

「不法投棄許さん」の東大和警察署の看板虚しく、ソファー、電子レンジ、洗濯機などの粗大ゴミが捨てられている。
捨てられたマネキンの頭部を見た瞬間、思わず腰が抜けた。
ラブホテル廃墟の脇に捨てられたエロ本。誰もいないはずの廃墟に、誰かの気配を感じる。その誰かが精液を炸裂させた痕跡を見たようで思わず身震いしてしまう。
「ごみすてる あなたの人生 先がない」と東大和警察署の看板が煽ってくる。
「ゴミすてる あなたに家庭 ありますか」と東大和警察署がさらに煽ってくる。ゴミを捨てる人だけでなく、関係のない未婚者まで撃ってくる東大和警察署。やめてくれ!

生と死。ラブホテルと廃墟のコントラスト。
小学4年生でも思い浮かぶような組み合わせ。しかも情緒的だ。

『一番奥で静かな旅荘赤坂』と看板がある。『旅荘赤坂』は多摩湖ラブホテル通りの大トリだった。助手席のひとが照れてばかりいると最後のホテルを過ぎてしまう。
建物は解体され、敷地はバリケードで囲まれる。しかし敷地内には廃材やゴミが投げ込まれてしまっている。
多摩湖自転車道沿いのほぼすべてのトタン板に落書きがされている。そしてひたすら「不法投棄禁止」の看板が連なる。
これだけ落書きが続くとさすがに治安の悪さが不安になるが、昼間はランニングや散歩を楽しむ人が多いので安心して歩ける。

都市近郊には、当時ラブホテルだの病院だのの廃墟がいくらでもあった。
わたしがまだヤングだったころ、地元の悪友らと廃墟をめぐったことがある。
悪友らは、ドアを蹴破ったり、壁に穴を開けたり、ときにガラスを割ったりした。
何のためにわざわざモノを壊すのか? 全くわからなかった。
わたしは彼らのそんな粗暴さがいやだった。

『ホテル クイン』。過去に殺傷事件があったと噂されるが、実際はよくわからない。全室に設置された7500曲収録のレーザーカラオケがウリだったようだ。
全16棟のコテージがある広い敷地(17棟という説もある)。足元には破壊された家具、冷蔵庫などが散乱し、壁という壁にスプレーの落書きがある。
部屋の目の前に駐車できるため、人目を気にせずにホテルを利用できた。コテージタイプは隣室に声が届きにくいのも魅力だろう。時の経過とともに廃墟は茶色、もしくは緑色の景色に飲まれていく。
フロントの窓口にある家具に貼られたメモ。社長や従業員、取引先の電話番号が書かれたシールを剥がす余裕がないほど、慌てて退去したのだろうか。
ラブホテルの一室。部屋に残されたベッド、ソファー、カーペットがカビくさい。思わずむせるほどだった。

廃墟のいくつかは、バリケードの一部が開いており、敷地のなかを“こっそり”探索できた。
廃墟に籠もるカビっぽい空気を嗅ぎながら、荒れに荒れた敷地を歩き回る。そして薄暗いコテージを覗き込む。部屋に残されたベッド。その布地に染みる男女の生臭い体液を想像してしまい、わたしは怖くなって逃げ出してしまった。

交通アクセス
電車:西武線西武球場前駅(埼玉県所沢市上山口)