訪れたスポット
1.青梅駅前
青梅市は、多摩地域でも屈指の大きな自治体だ。
東京方面から中央線で立川駅まで約40分。立川駅からは青梅線を乗り継ぎ、さらに30分ほど揺られる必要がある。市の人口は約13万人というから、それなりに規模はでかい。

青梅市にあるJR青梅駅。まるで市の中心地のような響きがあるが、青梅駅周辺の人口は1万人ほど。コロナ禍以降、1日の乗車人員は5000人を切るという。
人口13万人を擁する中都市の主要駅としては、こじんまりした印象を受ける。

商業の中心は、青梅駅から2駅離れた河辺駅、そのとなりの小作駅(羽村市)にかけて。
1960年代、東京都が整備した西東京工業団地に近く、日野自動車羽村工場、カシオ計算機、タチエス、住友金属鉱山といった錚々たる企業が並ぶ。そちらは周辺に5万もの人口を抱える。

旧青梅街道沿いにある商店街は、「昭和レトロの街」をテーマとし、昭和っぽい雰囲気を醸し出している。昭和レトロ商品博物館、昭和幻燈館などが演出する、映画『Always 三丁目の夕日』的な、ネオ昭和をブーストアップしたような過剰なノスタルジアがそこにある。

2020年に惜しまれて閉館した青梅赤塚不二夫会館も、それに一役買っていた。
青梅赤塚不二夫会館が閉館した理由は、明治年間に建てられた建物の老朽化だという。

青梅駅前の商店街は、手描きの映画看板があちこちに掲げられていることで以前話題になった。これらの看板は、久保板観さんという地元出身の映画看板師が、町おこしのために1994年からひとりで描き続けた作品群らしい。しかし久保さんが2018年に他界して以降、看板や建物の老朽化を起因とし、現在までに相当数が撤去されている。





青梅の地を久しぶりに再訪した人は、「以前はもっと映画看板があったのに……」と寂しさを覚えるはずだ。散歩ブログに掲載されているような、『ローマの休日』や『ニュー・シネマ・パラダイス』、原節子や笠智衆が描かれた華やかな映画看板がずらりと並ぶ情景はもう存在しない。
いくつか残された看板もあるが、そこに描かれる往年のスターは色あせ、昭和年間の建物も取り壊され、多くが空き地になっている。
令和の時代に、我々がどれだけ引き留めようとも、昭和は足早に遠ざかっている。


本当の昭和の残り香は、駅前で無言の存在感を放ち続ける、この廃ビルだろう。
駅前の一等地に佇むのは、6階建て地下1階の総合スーパー『長崎屋青梅店』の廃墟(青梅共栄ビル)だ。

長崎屋は、いまでこそ北海道、青森、茨城、大阪、高知にいくつか店舗を構えるのみだが、昭和後期から平成初期にかけては全国チェーンの総合スーパーだった。
カジュアルな洋服屋、靴屋、眼鏡屋、帽子屋、スポーツ用品店、文房具屋、本屋が入っていた。ゲームセンター、食堂、屋上遊園地を備えていたという情報もある。
長崎屋青梅店が開店したのは1972年。廃ビルのガラス窓から、がらんどうの店内を覗くと、旧式のエスカレーターが無人の上階へと伸びている。
2002年に青梅店は閉店。
総合スーパーが去ったあと、地元の食品スーパーが営業していたが、それも2015年に撤退。現在はビル1棟がまるごと廃墟になっている。




青梅駅の周囲は、トタン屋根の古い家屋、板張りの廃墟が目を引く。
青梅共栄ビルの向かいにある青梅中央ビルは、2階は空っぽ。その裏手にある元学習塾の4階建てビルも、これまた廃墟になっていた。



旧青梅街道沿いの商店街で、映画看板に代わって、やたらアピールしてくるのが猫のキャラクターだ。
撤去された映画看板の衣鉢を継ぐべく、『極道の猫たち』『猫たちの沈黙』といった看板があちこちに設置されている。正直意味は全くわからないが、「今度は猫を推していく!!」という地元住民の力強い意思を感じる。


「みんな猫が好きでしょ?」「レトロでおしゃれでしょ?」的な激推しっぷりが鼻につくものの、しかし事実として私は猫好きなので受け入れるしかない。地元の商店街の説明書きに、「織物の町として栄えた青梅は昔、養蚕が盛んで、鼠を退治する猫は大変愛された」なんて記述があったが…………正直なところ、むちゃくちゃな後付け感が否めない。

駅前の裏通りに、「昭和の猫町 にゃにゃまがり」と手作りのアーチが設置されていた。湿っぽいブロック塀に挟まれた生活通路。人とすれ違うのも難しいほどの道幅だ。


町全体がレトロ推し、猫推し。
駅前に限れば、あらゆるところに「映画看板」「猫看板」が設置されている。カメラ片手に生活道路、裏路地を歩いても、人目がさほど気にならないのは散歩向きといえる。
青梅市は、青梅街道の宿場町として栄えた古い町だ。
駅の東側には、宿場町の面影を残す(?)ような、小料理屋や喫茶店などが軒を連ねている。



駅前に怪しげなサービスをしてくれるという噂のエステ店を見かけた。2016年頃までは築100年以上の遊郭跡も残っていたが、現在は取り壊され、駐車場になっている。

これだけ猫推しの町なのに、今回の散歩で猫は一度も見なかった。
交通アクセス
電車:JR青梅駅(東京都青梅市本町)
車:国道411を青梅方面へ。周辺の有料駐車場は1日1000円前後

